ふと心に留まった詩 - 祝婚歌

父親がもうすぐ還暦を迎えるのでなにかお祝いを兼ねて本でも贈ろうかなー、と思い立って、豊かな老後を送ろう系の本をいろいろ立ち読んでいたときに見つけた一節。なんか自分のことにも重ね合わせてしまって妙に心に残って、いつでも読み返せるようにここにメモっておく。もともとは吉野弘さんという山形出身の詩人の方が、姪っ子の結婚式のときに贈ったものだそうだ。
タイトルは「祝婚歌」。

 

二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい