本読んだ。村上龍×伊藤穰一「DIALOGUE」

「個」を見つめるダイアローグ

「個」を見つめるダイアローグ

 

ネットの世界で数多い活動をしている伊藤穣一氏と、JMMをスタート時からずっと読んでて考え方の好きな作家のひとり村上龍との対談本を本屋で見かけて、おもわず衝動買い。一気に読みました。
インターネット、ブログ、メディア、政治、経済、教育、国際、戦争、と、期待にたがわず広範で示唆に富んだ内容。一読しただけではとても消化しきれない。。ひとまずとくに共感したところを引用羅列。ウェブ進化論で言われている「オープンソース現象」、すなわち生きるモチベーションとか、楽しさを感じることとか、の話に特にシンパシー感じました。

 

(p21)
結局、インターネットやITの本当の価値というのは、ジョーイが言うように、お金や権力の外にあるような気がする。それには、まだ名前がついていないんだろう。でも人間のモチベーションとしては普遍的だと思う。

(p37)
それに対して、オープンソースの世界は、プログラムの開発でも何でも、すごく盛り上がる。かかわってる人間たちも、コミュニケーションを交わしていてとても楽しい。これだけの情報化社会になっているわけだから、大衆の元気を引き出すのも、やっぱり「オープン」がキーワードになるのだと思う。

(p57)
でも、これからの日本には、貧富の格差は必ず出てくるし、その格差もどんどん大きくなっていく。(中略)僕が「13歳のハローワーク」で言いたかったのも、「そうした時代になるから、お金持ちではなくとも自分がハッピーになれる仕事を見つけた人の勝ちなんだよ」ということだったの。

ホームレスなタクシー運転手の話。

(p151)
タクシーに乗るとよく運転手の人と話すんだけど、最近続けて、元ホームレスという人と、これからホームレスになるつもりだという人と出会った。(中略)偶然なんだけど、どちらも年齢は60歳くらいで、彼らの話を聞いたとき、やっぱり考えさせられた。今60代の人でも年金だけじゃ生活できないというんだから、僕らは当然できないよね。

(p155)
将来、自分が幸せになれるかどうか、それを考えることが一つの視点だと思うけど、ただ、それを考えるときに、金持ちになれるかどうかということだけが基準だと、なかにはつらい人も出てくる。お金がたくさんあることと、幸せになることは明らかに違うからね。

問題はね、今この日本で、若い人から定年退職した人まで、自分が何をしていいか分からないということなんだよ。何をしていいか分からずに過ごすというのは結局、自分の時間、資源をどんどん無駄に消費することでしょう。知識とかスキルが何も入ってこない、お金も入ってこないという状況で、ただ浪費するだけ。

二宮金次郎の話。

(p187)
そこでまず彼がやったのは、一生懸命働いている農民とそうでない農民がいたら、一生懸命やっている農民を徹底的に褒め、年貢の量も4分の1にした。それまでは、とても無理な年貢が課せられていたんだけれど、「これではやる気がおきないから」と小田原藩主に掛け合って、やる気がおきる範囲の年貢にしてもらった。(中略)要するにモチベーションを与えたわけだよ。やったことはほとんどカルロス・ゴーンに近いんだよ。

(p189)
二宮金次郎は基本的にはヒューマニストかもしれないけど、ヒューマニズムだけで彼は動いたんじゃないと思う。経済合理性を基準に、藩を立て直したわけだから。二宮金次郎がそこまで立派なことをやった人だと知らなくて、自分の中では、ただ薪を背負って本を読んでいる人だった。けれど、彼の功績をヒューマニズムで語るのか、合理性から語るのかによってすごく違うと思う。

ヒルズ族」なんて言われている人たちをどう思う?って話題。

(p196)
僕も六本木ヒルズには魅力を感じない。でも、ITや金融のお金持ちたちが、六本木ヒルズに代表される、ある価値観を示し始めていて、マスメディアもそれを面白がって煽っている六本木ヒルズのような都市文化はもちろんあっていいと思うけど、その都市文化にしても価値観にしても、本当はああいうものだけじゃないとメディアが示さないと、これからの子供や若い人は辛いと思う。六本木ヒルズだけがハッピーの象徴になってしまうと、格差社会で置いてきぼりを食らっている人は生きていく価値を見出すのがとてもむずかしくなる。
その価値観というのは、ジョーイが言ったように世界とコミュニケーションすることかもしれないし、自分にやれることがあるかを考えていくことかもしれない。たとえば、アフリカに対する支援にしても、彼らが求めているものの中に、自分でも提供できるものがあれば、それを実行することで、自分も含めてまわりがみんなハッピーになれる。

 

 

そしてさて。自分はなに考えてなに目指して生きていこうか。
走りながら考えよう。